Column
2015年:自動運転時代の幕開け
2015年2月19日掲載
フロスト&サリバン 自動車・交通運輸部門コンサルタント
森本尚
フロスト&サリバンは「2015年:15のトレンド予測」をこの度発表した。その中で、2015年は真の自動運転時代の幕開けとして、自動運転車両が日常生活へ進出を開始する年になると予測している。
フロスト&サリバンの分析では、2025年までに米国における自動運転車の出荷台数は約320万台規模に成長し、そのうち10%は完全自動運転車となり、45%は半自動運転あるいは部分的に自動化したものになると予測している。一方、欧州では2025年までに300万台の車両が何らかの自動運転機能を備えた車両となると予想している。
完全自動運転の実現には、単一のテクノロジーでは不十分であり、人間からの置き換えが可能な程度に高度に発達した人工知能を中心とした、複数のテクノロジーの統合が必須である。
自動車における車車間(V2V)通信技術と先進運転支援システム(ADAS)は、それらの持つ機能に関して相互補完が期待できる。自動運転車は人間よりも優れた知覚機能を持つことは可能であるが、当面はあくまでドライバーの管理下においてサポート的な役割を果たす控えめなシステムとして普及が進んでいくと思われる。
ハードウェアに加え、完全自動運転の実現には、インテリジェントかつ安定したソフトウェアの開発も課題である。また、完全自動運転には、車車間通信の飛躍的な改善が必須であり、車載ネットワークシステムについても、従来のCANやフレックスレイ型から、イーサネット/IPをベースとした、ステアリング、ブレーキ、アクセル用ECUや作動装置などのモジュールにおける大規模なビットレートのデータ送受信や、リアルタイムにおける運転環境のデータ処理が求められることになるだろう。
これまでのテクノロジーの進化に伴う自動車産業の未来予測の多くは、個人が車両を所有することが前提であるビジネスモデルに留まっている。しかし、カーシェアリングやカーリースなど、これまで市場成長に伸び悩んできた、複数ユーザーで車両を共有するビジネスモデルの拡大が今後期待されており、これらは自動運転技術を活用することで非常に大きな利益ポテンシャルを持つ可能性がある。
この様な、第2世代とも呼べる車両共有型ビジネスモデルは、従来の自動車メーカーが新たな競合に直面することも示している。既に、グーグルの様な新たな市場参入企業が、自動運転技術や強力なICT技術バックグラウンドを武器に、車両所有者が権限を持つ従来のビジネスモデルに大きな波紋を投げ掛け始めている。
自動運転車両の普及には、多くの法的措置も求められる。完全自動運転化には、ADAS機能を超えるインテリジェントなソフトウェアやアーキテクチャが必要となるほか、試験的な実走データを収集、分析していくためにも、早急な法的整備が自動運転車の成功を左右するだろう。また、より多くのサプライヤーが自動運転機能に対応するコンポーネントを製造することも求められる。さらに、従来の自動車メーカーの多くは、自動運転機能をADAS機能の複合および延長という位置付けで提供する傾向が強く、消費者が求める自動運転機能や車両にマッチしていくかどうか、という点も自動運転車市場の成功を左右する大きな要因と言えるだろう。
※本コラムは、2015年1月26日付けの日刊自動車新聞に掲載されたものです。